こんばんわ。管理人の来栖あさひです。
今回の記事は『マンガ「僕たちがやりました」を読んだ感想』になっています。
ドラマ化もされた本作品ですが、何度読んでも夢中になれる作品としてご紹介できたらと思います。
「僕たちがやりました」とは?
「僕たちがやりました」は原作:金城宗幸、漫画:荒木光により、「週刊ヤングマガジン(講談社)」にて2015年19号から2017年8号まで連載されたマンガです。
仕返しとイタズラで人の生命を奪ってしまい、普通の人生ではなくなってしまった高校生たち。
彼らの青春逃亡劇と生々しい人間の本質・本性の心理を描いた作品になっています。
息つく暇もない「あらすじ」
凡下高校の二年生・増渕トビオは同級生の丸山友貴(マル)、伊佐美翔、OBで金持ちのパイセン(小坂秀郎)とそこそこ楽しい日常を過ごしていました。
凡下高校の隣には不良校で有名な矢波高校があり、矢波高生に目をつけられたマルはボコボコにされてしまいます。
仕返しをすることにしたトビオたちは、夜間に矢波高校に忍び込み、パイセンの財力で作ったプラスチック爆弾を校内の至るところに仕掛けました。
翌日、遠隔操作で爆弾を起爆させながら矢波高生をパニックに陥れていきますが、プロパンガスの近くに設置した爆弾が誘爆し、死傷者も出る大惨事に発展してしまいます。
パイセンはとトビオたちに口止め料を払って、伊佐美がグループを抜けます。トビオとマルはパイセンとともにプーケットへの海外逃亡を図るが、パイセンが逮捕されてしまい、計画は断念となります。
マルはトビオの口止め料の大半を奪って逃走、トビオはアテのない逃亡生活へ…。脱退した伊佐美は恋人の新里今宵のもとで過ごすようになっていきました。
矢波高校不良グループのリーダー・市橋哲人は犯人がトビオたちであると気づいて、蒼川蓮子の協力を得てトビオたちの行方を追いますが、ケガが原因で舎弟たちから見捨てられていきます。
そんなとき、パイセンそっくりの男・真良中幹男が自首してきたことで、トビオたちは無罪となりました。
釈放されたパイセンから「父親が身代わりを用意して自分たちを助けた」ことをカミングアウトされたトビオたちは身代わりによる無罪を納得しようとしますが、刑事の飯室成男から呪詛の言葉を送られたことや、改心してトビオと和解しながらも自殺してしまった市橋、パイセンの父・輪島宗十郎の真意などの苦しみを経て、大々的な自首を決意します。
渋谷にて自首イベントを決行するも輪島の怒りを買い、パイセンの異母兄弟・輪島玲夢に拉致されてしまいます。マルと伊佐美は逃げ出し、玲夢殺害によってパイセンは逮捕されますが、自首騒動は輪島によってもみ消され、残されたトビオは被害者として扱われてしまい、トビオたちの自首は失敗に終わってしまいました。
ーー十年後。パイセンが出所し、トビオたちは出所祝いで集まりますが、十年前のような仲良しグループではなくなってしまったことを痛感します。
それでもトビオは十年間、爆破事件のトラウマで苦しんでいたことをパイセンのおかげで開き直れたと感謝します。しかし、矢波高生たちが火だるまになっていく光景を見たあの日、本当は笑っていたことを思い出すのでした。
個性的で魅力ある「登場人物」
「僕たちがやりました」には個性的で魅力あるキャラクターが多数登場します。
ここではその人物たちを見ていきましょう。
増渕トビオ
主人公。凡下高校の二年生で、アダ名は「トビオ」。
そこそこの人生が理想。
矢波高校爆破事件で10人もの死者を出したことに苦しむが、逃亡の道を選んだ。
逃亡生活の中で、伊佐美の彼女である今宵と寝て童貞を捨てた。
嘘を貫いたまま市橋と友達になり、蓮子とも結ばれるが、市橋が自殺したことで自首を決意する。
自首騒動後、蓮子とは「爆破事件がきっかけで好きになった蓮子と一緒にいると事件を思い出すから無理だ」と言い、別れる。
十年後では、爆破事件の記憶に「幸せ」で蓋をして生活しているが、時折死にたくなる衝動に駆られる。
丸山友貴
トビオの同級生。アダ名は「マル」。
内向的だが、冷酷で腹黒い性格。
矢波高生に「死ね」と言ったことがきっかけで目をつけられ、別高校の水前寺と殴り合いをさせられた挙げ句、リンチされる。この件によって報復を計画し、矢波高校爆破事件に発展してしまう。
パイセンからもらった口止め料をトビオの分も奪って逃亡し、京都の風俗に入り浸る。伊佐美の分の口止め料も奪おうとするが、外国人女性のスリに遭って失敗。
真良中の自首で無罪となった後は一切罪悪感を抱かず、いっそうパイセンから金をたかり、高級時計をクラスメイトに見せびらかしていたが、水前寺から報復を受ける。
水前寺への復讐に失敗し、和解にも失敗。これによって「トビオたちと本当の友達になる」と決意して自首イベントに臨むが、玲夢の脅迫によりあっさり逃げ出し、自首イベントの資金の一部を奪った。
十年後、奪った資金を元手に登録商標「ミトコンドリア水」のネズミ講によって年収3,000万円になっている。
伊佐美翔
トビオの同級生。アダ名は「伊佐美」。
お調子者だが冷静な面もある。今宵と付き合っている。
矢波高校爆破事件の罪悪感に苛まれ自殺未遂をする。その後、生きていることを実感する為に今宵とのセックスに依存するようになる。
真良中の自首で無罪となった後、飯室の呪詛で勃起しなくなったイチモツの為に、爆破事件被害者の友人を装って線香をあげる「お遍路さん」を完遂し、勃起を復活させた。
今宵を抱いた後で妊娠を告げられ、殺人犯の父を持たせたくないと追い出される。
「罪を償って父親になる」という決意のもとに自首イベントに参加し、壇上でクラウディア・トルネイドを披露した。玲夢の脅迫によってマルに続いて逃げ出し、今宵と落ち合って別れも決意も全て反故にしてセックスをした。
十年後では今宵と結婚しており、明日男(トゥモロオ)と翌朝(ネモ)の2児の父となっている。
パイセンの出所祝いで、今日来た本音はパイセンに許してもらう為だったと明かす。また、トビオに対して「自分と同じで楽になりたかったから蓮子と別れて、全部なかったことにしたんだろ?」と核心を突いた発言をし、掴み合いのケンカになりかけていた。
小坂秀郎
凡下高校フットサル部のOB。20歳。アダ名は「パイセン」。
関西弁の陽気なお金持ち。
幼い頃に母親を亡くし、会ったこともない父親から送られてくる金で生活している。しかし、愛情を知らずに育った為に金でしかコミュニケーションが取れないことに内心では悩んでいる。
友人がいない為、毎日のように母校に来ては後輩であるトビオたちと遊んでいるが、金で繋がっているだけでも友人であるトビオたちを大切に思っている。
爆破事件で防犯カメラに自分が映っていたことからプーケットへの海外逃亡を図るが、空港で逮捕されてしまう。
弁護士から父親である輪島が真良中を身代わりに釈放された真相を聞かされ、再会したトビオたちにふざけ半分で真相を明かしてしまった。
刑事の飯室から自分の父親が輪島であることを聞かされ、また、事件をもみ消したのはパイセンを守る為ではなく自分が殺人犯の息子を持つ父親にならない為であり、パイセンのことは愛していないと言われ、輪島に会う決意をする。
輪島に会い、自分が父親に一切愛されていないことがわかり、報復も兼ねた自首イベントを開催する。
自首イベントでは結果的に玲夢を殺害し、逮捕され、殺人罪で10年服役することになり、自首イベントももみ消され、血縁関係も抹消された。
十年後、金も身寄りもなくなったがお笑い芸人という夢を見つけ、宅配便の仕事をしながら養成学校に通っている。
その夢を聞いたトビオから「人殺しが何楽しそうに夢語ってんですか!?」と非難され、「生きてんねんからしゃあないやろ?」と返答する。時々死にたくなるというトビオに「死にたくなるのが生きてる証拠」だとアドバイスした。
蒼川蓮子
トビオの幼なじみ。女子高に通っており、市橋と仲が良い。
トビオと付き合うが、市橋が自殺したことで楽になりたいと思ったトビオから別れを切り出される。
自首イベント後、トビオに真意を確かめた際に「爆破事件がきっかけで好きになった蓮子を事件と切り離して考えられなくなってる。大好きだけど…無理だ…」と言われてしまう。
十年後では別の男性と結婚し、子どもを身ごもっている。
病院でトビオと再会した際には「よかった、生きてて。頑張ったね」と褒めている。
新里今宵
伊佐美と付き合っているが、伊佐美の逃亡後、入り浸りになっていたトビオが童貞を喪失した相手。
巨乳で小動物系で、天然だがどこかしっかり者のエロカワ女子。
真良中の自主でトビオたちが無罪となった後で妊娠が発覚する。
妊娠を伊佐美と父親に報告した際、父親から中絶するよう言われるが拒絶し、親子の縁を切られてしまう。また、伊佐美には「キレイな人間じゃないじゃん。この子が大きくなった時に『犯罪者の子』って言われない様に」と泣きながら別れを告げた。
自首イベントが失敗したときは、状況に流される形で伊佐美とよりを戻し、妊娠中にも関わらず公衆トイレでセックスをして別れを反故にした。
十年後では伊佐美と結婚し、明日男と翌朝の2児の母となっている。父親と同様クラウディア・トルネイドの使い手である。
市橋哲人
矢波高校で不良グループのトップに君臨するヤンキー。両親はおらず、祖母と2人暮らし。
不良である一方で、パイロットになるという夢を叶える為に予備校に通っている。
爆破事件によって車椅子生活を余儀なくされるが、トビオたちを犯人だと確信して追い回す。しかし、舎弟たちに手のひらを返され、トップの座を奪われてしまった。
真良中の自首によってトビオたちが犯人でなかったと思い込んだことや蓮子との交流の中で、次第に改心していき、自殺未遂をしたトビオと病院で仲良くなる。
トビオと蓮子が付き合っていることを聞かされたときに激励を送ったが、身体の不自由に加えて祖母が亡くなったことからのあきらめもあり、「蓮子のこと幸せにしろよ」と動画で伝え、真実を知ることなく病院から飛び降り自殺をしてしまう。
十年後、産まれた子どもに会いに行く途中のトビオの前に幻影として現れ、自殺用のナイフを手渡した。
私見と感想とオススメのポイント
ここからは私見で感想(ネタバレあり)とオススメのポイントを書いていきます。
- 献身的な女子勢に胸キュン
- 移り変わる状況と精神状態、そして人間関係
- 本能と欲が人間を作っている
- 今ある「そこそこ」はずっと続かない
- 本当の主人公はパイセン?
献身的な女子勢に胸キュン
この作品は青春逃亡劇として描かれており、トビオたちは逃亡生活に必死です。
そんなトビオたちの支えになってくれたのが、蓮子と今宵の女子勢でした。
自分本位で勝手な言い分を受け入れてくれながら、献身的にトビオや伊佐美に尽くす姿には胸キュンせざるを得ませんでしたね。
ちなみに、もちろん彼女たちも自分の為に考え、動いているわけで、実際に尽くしているかと聞かれると何とも言えない部分もありますが、トビオたちの助けになってくれたことは事実です。
移り変わる状況と精神状態、そして人間関係
トビオたち4人の当初の人間関係は矢波高校爆破を機に終わりを告げたと言っても良いでしょう。
逃亡生活の中で一喜一憂しながら、各々の精神状態も移り変わっていき、その場面で人間関係も変わっていきます。
何度もぶつかりながら、何度も「もう会わなそうだな」と思いながらも集合するトビオたちでしたが、十年後でトビオと伊佐美が衝突したときに、「やっぱ…逢ったらアカンかったんやなぁ俺らは…」と言ったパイセンの表情がすごく印象に残りました。
4人が集まったのはあれが最後になっちゃったのかなぁ…。
本能と欲が人間を作っている
物語が進んでいくに連れて、トビオたちの行動の根源がどこにあるのかが明らかになってきます。
「そこそこ」を取り戻したいトビオ、セックスで精神の安定を図った伊佐美、とにかく金が欲しいマル、愛に飢えたパイセン。
彼らはそれぞれ違った方法で生きていきます。
そんなトビオたちの個性が物語を引き立てていると思えました。
私は自首イベントで逃げ出した伊佐美とマルの本能と欲求丸出しな感じが好きですね。
今ある「そこそこ」はずっと続かない
トビオが望んでいた「そこそこ」の生活には矢波高校爆破事件があって戻れなくなったと言えます。
罪悪感から来る苦しみに蓋をして「そこそこ」を演じてみても、ふとした拍子に事件で死んでしまった人たちを思い出して苦悩する様に可哀想になったりもします。
十年後にも苦悩を抱えて生きるトビオたち(マルは苦悩していなさそう)を見ていて、自分が死ぬまで背負って生きていかなくてはいけないのかと思うと、トビオが「時々死にたくなる自分」と言うのも分かる気がしました。
本当の主人公はパイセン?
この物語は、トビオの視点からパイセンという人物にスポットを当てた物語なんじゃないかと思っています。
パイセンの波瀾万丈な人生はとても目を引かれる部分もあり、また、物語の後半では愛されることが分からない苦悩を描いており、本作において最も特殊性の高いキャラクターであったと思います。
ただ、自首イベントで玲夢を殺害してしまうので、そこで主人公たり得なかったのかもしれませんね。
おわりに
最後までご覧いただきありがとうございました。
この「僕たちがやりました」はテレビドラマもされていて、そちらも楽しく観ています。
本作品では「人間の黒い部分」が強く描かれている為、そういった負の感情に弱い人には辛い作品であることも事実かと思います。
しかし、そんな中を強く生きていこうとする若者たちが描かれてもいるという一面もありますので、読んだことのない人にも自信を持ってオススメできる作品ですね。
それではまたm(_ _)m
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